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発達障害の子どもの記憶力とは?ADHD・ASD別の特徴と親ができるサポート法

お子さんの「記憶力」に、他の子どもとは少し違う特徴を感じていませんか?些細なことを驚くほど覚えている一方で、昨日の約束を忘れてしまう――そんな極端な場面に戸惑う親御さんも多いでしょう。

実は、ADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)など発達障害のタイプごとに、記憶の得意・不得意に独特な傾向が見られるのです。

本記事では、発達障害の子どもの記憶力の特徴を専門的な視点からわかりやすく解説し、日常生活で起こりがちな困りごとと親ができるサポート方法を紹介します。お子さんの「覚える」「忘れる」にまつわる悩みを軽減し、伸ばせる力を活かすヒントを一緒に見つけていきましょう。

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発達障害と記憶力の関係 – ワーキングメモリの重要性

発達障害の子どもたちの記憶力には、短期記憶(一時的に情報を保持する記憶)と長期記憶(長期間保持される記憶)のバランスや、情報処理の仕方に特徴があります。

特に注目されるのがワーキングメモリ(作業記憶)です。ワーキングメモリとは短い時間だけ出来事や言葉などの情報を脳内にとどめておける容量のことで、複数の情報を一時的に記憶して同時に処理する力を指します。

研究によれば、発達障害の子どもたちの多くでこのワーキングメモリの弱さが見られ、日常生活の様々な困難につながっていることが明らかになっています。

例えば一度に複数の指示を受けると途中で内容を忘れてしまったり、必要な持ち物をうっかり忘れてしまったりすることがあるのは、ワーキングメモリの容量が小さいためだと考えられます。ワーキングメモリの弱さは発達障害の主な特性の一つであり、これが記憶力の課題として表れやすいのです。

一方で、発達障害の子どもの中には長期記憶が非常に優れているケースもあります。後述するように、特にASD傾向のある子どもは興味のある分野に関する知識を驚くほど蓄えることがあります。

しかし総じて言えば、発達障害のある子どもは「短期的に情報を記憶しておくこと」が苦手な傾向が強く、この特徴が「忘れっぽさ」や「覚えられない」という困りごとに直結しやすいと言えるでしょう。

ADHDの子どもはなぜ忘れ物が多い?記憶力に関する特徴

注意欠如・多動症(ADHD)と記憶力の弱さ

ADHDの傾向が強いお子さんでよく見られるのが、物事をすぐ忘れてしまうという困りごとです。

たとえば、学校で先生から宿題の指示を受けても家に帰る頃には内容を忘れていたり、明日持って行く物を準備し忘れてしまったり、友達との約束そのものをうっかり失念してしまうことがあります。こうした「忘れっぽさ」は、決して怠慢や意志の弱さではなくADHD特有の認知機能の特徴によるものです。

ADHD児の記憶力低下の背景にはワーキングメモリの弱さが大きく関与しています。脳内に情報を一時的に留めておく容量(ワーキングメモリ)が小さいため、ついさっき聞いたことでもすぐ抜け落ちてしまうのです。

例えば口頭で3つの指示を受けた場合、メモを取る前に内容を頭に保持しておく段階で容量オーバーとなり、指示の一部が記憶から抜け落ちてしまうことがあります。その結果、「何をするんだっけ?」と情報を取りこぼし、忘れ物ややり残しにつながってしまいます。

さらに、ADHDの子どもは注意力が散漫になりやすいため、記憶に定着させる前に意識が別の刺激へ移ってしまうこともしばしばです。集中力が続かず聞いた話が頭に入っていない、あるいは覚えようとしても雑念が入ってしまう──これも記憶力が低く見える要因です。

8歳前後の学齢期のお子さんの場合、教科書や文房具を頻繁に忘れたり、先生の指示をすぐに忘れてしまったりといったことが顕著に見られるとの報告もあります。これらは決して珍しいことではなく、ADHDの子どもに典型的な症状なのです。

学習障害(LD)との関連

ADHDと同様に、学習障害(LD)のある子どもも記憶に関する困難を抱える場合があります。LDには読字障害や書字障害、算数障害などがありますが、これらの背景にもワーキングメモリや情報処理の偏りが影響します。

たとえば読字障害の子は文字の形と音を結びつけて覚えるのが難しく、算数障害の子は数の概念や手順を一時的に記憶しておくのが苦手です。ADHDやLDの子どもに共通するのはワーキングメモリの弱さであり、それが「覚えることが苦手」という状況を生んでいます。

もっとも、ADHDやLDの子ども全員の記憶力が低いわけではありません。知的能力が高くても記憶でつまずくケースもあれば、その逆もあります。大切なのは「記憶力の弱さはその子の努力不足ではなく脳機能の特徴によるもの」と理解することです。親として叱責するのではなく、次章で述べるようなサポート策を講じることが必要になります。

ASDの子どもは記憶力がいい?優れた点と苦手な点

自閉スペクトラム症(ASD)の記憶の特徴

自閉スペクトラム症(ASD)の傾向が強いお子さんについて、「驚異的な記憶力を持っている」と感じるエピソードを耳にすることがあります。実際、ASDの子どもの中には特定の分野に関してずば抜けた記憶力を発揮する例が知られています。

たとえば一度見た風景を写真のように細部まで覚えていたり、電車の時刻表を何年分も暗記していたり、歴史上の出来事やデータを大量に記憶して「○○博士」とあだ名される子もいます。こうした能力はASD特有の「こだわり」や「興味の偏り」に由来すると考えられます。すなわち、ASDの子どもは自分の強い関心が向く対象には途方もない集中力と記憶力を発揮するのです。

ASD児が記憶力に優れる理由としては、以下のようなポイントが挙げられます。

長期記憶が優れている
ASDの子どもは短期記憶やワーキングメモリよりも、経験したことを長期間保持する長期記憶の能力が高いと言われます。一度頭に入った情報は膨大なデータベースのように蓄積され、本人も忘れたくても忘れられないほど強く残ることがあります。
視覚情報の記憶が得意
聴覚より視覚で覚える方が得意という研究もあり、目で見たものを写真に撮るように記憶する「カメラアイ」と呼ばれる能力を持つ子もいます。図や映像で入った情報を正確に長く留めておけるため、細部まで覚えていることが可能になります。
過去の出来事への強いこだわり
ASDの子は将来の想像よりも過去の記憶に意識が向きやすい傾向があります。幼い頃の出来事を昨日のことのように詳細に覚えていたり、昔関わった人たちの名前や会話をすべて記憶していることもあります。
ルールや順序を忠実に守る
変化を嫌い、一度覚えた決まりごとを頑なに守ろうとする特性から、習慣化した手順やルールは絶対に忘れないという強みもあります。
感覚過敏ゆえの鮮明な記憶
感覚に敏感なお子さんの場合、音・光・匂いなどの刺激による印象が人一倍強く残ります。特に不快な感覚体験は脳裏に焼き付いて離れず、後述するフラッシュバック現象の一因にもなります。
サヴァン的な記憶力
ごく一部ですが、サヴァン症候群といって特定分野で天才的記憶能力を発揮する子もいます。例えばカレンダーの曜日を即答できる、見た風景を完全に再現できる、膨大な数字を暗唱できる等、突出した才能が記憶力の良さとして現れるケースです。

このようにASDの子どもは「好きなこと・得意なこと」において信じられない記憶力を示すことがあります。
しかし一方で、日常生活の中では必ずしも記憶力が良いとは言えない場面もあるのです。興味のないことや予想外の出来事に対しては注意が向きにくく、むしろ「忘れっぽい」「物覚えが悪い」と感じられることもあります。例えば、学校での連絡事項や日々の生活スケジュールなどには関心が薄いために覚えておらず、提出物を出し忘れたり約束をすっぽかしてしまったりすることもあります。ASDの子自身が自分の興味のない情報を後回しにしがちなため、記憶力にムラがあるように見えるのです。

ASDの記憶力が引き起こす困りごと – フラッシュバックと日常生活

ASDの子どもが持つ優れた記憶力は、裏を返せば嫌な記憶までも鮮明に残してしまうことを意味します。過去の嫌な体験を些細なきっかけで思い出し、当時の辛い感情がよみがえるフラッシュバックに悩まされる子も少なくありません。本人は忘れたいのに忘れられない記憶が心にこびりつき、不安感やストレスが高まってしまうのです。

また発達障害の子どもたちは強い感情を伴った出来事を特に記憶しやすい傾向があり、叱られた経験や失敗体験などネガティブな出来事ほど深く刻まれやすいことが指摘されています。そのため、過去のトラウマ的な記憶から抜け出せず情緒面で不安定になるケースも見られます。

さらに、記憶力に偏りがあることで生活上のアンバランスも生じます。たとえば好きな恐竜の名前やデータは完璧に覚えているのに、自分の靴下をどこに脱いだか覚えていない、宿題をやったかどうか忘れてしまう、といったことも起こり得ます。親御さんから見ると「どうして大事なことは忘れるのに、ゲームのキャラクター名ばかり覚えているの?」と不思議に思えるかもしれません。

しかしこれこそがASD児の記憶特性であり、重要度に関係なく記憶の優先順位が独特だということなのです。この特性は本人の責任ではなく生まれつきの脳の働きによるものですから、親としては叱るよりも特性を理解し受け入れる姿勢が必要になるでしょう。

親が知っておきたい記憶力の弱さによる困りごと

ここまで見てきたように、発達障害の子どもたちは記憶力に関するさまざまな困難を抱えがちです。それは具体的にどのような形で現れるのか、共通する例を整理してみましょう。

忘れ物・なくし物が多い
学校の宿題や提出物、持ち物を頻繁に忘れる、物を置き忘れてしまうといったことが日常茶飯事になります。親御さんがいくら「ちゃんと覚えていて」と言っても、本人の注意がそれてしまえば記憶に残りません。結果として先生に叱られたり、必要な学用品が手元になくて困ったりという事態が起こります。
指示や約束を覚えられない
一度に複数の指示を出されると処理しきれず混乱したり、口頭で言われただけの約束事はすぐに抜け落ちたりします。周囲からは「人の話を聞いていない」「だらしない」と誤解されがちですが、本人としては精一杯でも脳が情報を保持できない状態なのです。
学習面でのつまずき
授業中に先生の説明を覚えておけず内容を理解できない、習った漢字や英単語をすぐ忘れてしまう、文章題の指示を記憶しておけず解けない等、勉強で苦労しがちです。これらも記憶の問題から集中力低下を招き、成績や自己評価の低下につながりかねません。
成功体験より失敗体験を強く記憶する
前述のフラッシュバックのように、うまくいかなかった経験ばかりが記憶に残り、自信喪失や挑戦への消極性を招くことがあります。せっかく努力しても、失敗の記憶が強すぎて次に活かせないという悪循環になりがちです。

こうした困りごとは、発達障害の子ども本人にとっても生きづらさの原因となります。家族や先生から繰り返し「どうして覚えていないの!」「また忘れ物?」と言われるうちに、子どもは自己肯定感を下げてしまう恐れがあります。親御さんとしては、「この子は覚えるのが苦手なんだ」と割り切り、次章のような具体的なサポート策によってフォローしていくことが大切です。

記憶力をサポートするための親御さんの工夫と対処法

お子さんの記憶力の特性に合わせて、家庭や学校でいくつかの工夫を取り入れることで「忘れっぽさ」から生じる困りごとを軽減できます。以下に、親御さんができるサポート方法のポイントをまとめました。

生活リズムとルーティンの確立
毎日決まった時間に同じ行動をする習慣をつけましょう。例えば起床後に持ち物を確認する、帰宅後すぐに宿題に取り組む、寝る前にランドセルを準備する等、一連の流れをルール化します。同じパターンを繰り返すことで、子どもは記憶に頼らずに行動できるようになり、忘れ物ややり残しを防ぎやすくなります。
視覚的なサポート
子どもが自分で確認できる目に見える仕組みを整えます。予定や約束はカレンダーやホワイトボードに書いておく、持ち物チェックリストを作って玄関に貼る、タスクを絵や図にして示すなど、「見て思い出せる」工夫が有効です。口頭で言っただけでは忘れてしまうことも、視覚情報として残しておけば記憶の補助手段になります。最近はスマホのリマインダーやアラーム機能、音声メモなども活用できます。
一度に一つずつ伝える
指示やお願い事はできるだけシンプルにし、ひとつ伝えたら実行を見届け、次に移るようにしましょう。特に幼児~小学生くらいのお子さんには、「○○してから△△してね」と二段構えで言うと前半を忘れがちです。途中で「今何をするんだっけ?」と混乱しないよう、短い指示を繰り返すことが大切です。また、できれば視覚的な補助(ジェスチャーやイラスト)を交えて伝えると理解と記憶が定着しやすくなります。
環境を整える
家庭では、子どもが集中しやすいシンプルな学習環境を用意してあげましょう。テレビやゲームは勉強の間オフにし、必要な教材だけを広げるようにします。決まった学習スペース・文具置き場を作り、整理整頓を習慣づけることで、物を失くしたり探したりする無駄を減らせます。学校では、先生に協力をお願いし、席を前の方にしてもらう、板書をノートに写す時間を十分取ってもらうなど、記憶を補う配慮を相談すると良いでしょう。
持ち物チェックを習慣に
忘れ物を防ぐため、チェックリストを使って子どもと一緒に持ち物確認を行う習慣をつけます。

例えば登校前に「連絡帳OK、筆箱OK…」と毎日確認するうちに、子ども自身もポイントが掴めてきます。慣れてきたら、子どもが自分でチェックできるよう声掛けだけに移行しましょう(必要に応じて親がダブルチェック)。「忘れ物ゼロ」を目指すより、忘れ物を減らすプロセスを教えることが重要です。

デジタルツールの活用
現代ならではのツールも遠慮なく使いましょう。スマホやタブレットのリマインダーアプリやタイマーで時間や用事を知らせる、宿題の提出期限をカレンダーアプリで共有するといった方法は、記憶力をテクノロジーで補う有効策です。学校との連絡も、プリントよりデジタル連絡帳のほうが紛失や見落としが減る場合があります。家庭内でもGoogleカレンダーなどで家族と予定を共有しておくと、「言った言わない」を避けられるでしょう。
楽しく記憶力トレーニング
遊びの中で記憶力を鍛える工夫もしてみましょう。例えばトランプの神経衰弱(ペアのカード当て)や絵合わせゲーム、カルタ取りや百人一首などは楽しみながら記憶を使う遊びです。

小さいお子さんには読み聞かせも効果的です。耳から聞いた言葉と目で見た絵を結びつけて想像する過程が自然なワーキングメモリ訓練になります。小学生以上なら「後出しじゃんけん(わざと負けるように出す遊び)」なども、一瞬前の情報を保持して活用するゲームとしておすすめです。こうした取り組みは短期間で劇的な効果が出るものではありませんが、コツコツ続けることで徐々に記憶力の底上げにつながります。

成功体験を増やしポジティブに
忘れ物やミスばかりを指摘されると、子どもは自己評価を下げて意欲をなくしてしまいます。意識的に成功体験に目を向けてほめるようにしましょう。小さなことでも「今日は全部持ち物持って行けたね!」「昨日よりスムーズにできたね」と声をかけ、自信を積み重ねさせます。

ポジティブな記憶を増やすことで、失敗への不安を和らげ前向きに取り組めるようになります。親御さんや先生の共感的で励ましの態度は、安心感を生み出し記憶力向上の土台となる集中力・意欲を引き出します。

食事・睡眠・運動など生活習慣の見直し
脳の働きを支える栄養や休息も見逃せません。オメガ3脂肪酸(青魚、ナッツ類などに豊富)や鉄分(レバー、赤身肉、ほうれん草など)は記憶力の維持・向上に役立つ栄養素として知られています。野菜や果物に多いビタミンC・Eなど抗酸化成分も脳の老化防止に有効です。栄養バランスの良い食事を心がけると共に、十分な睡眠をとることも重要です。

睡眠中に記憶が整理・定着されるため、寝不足は記憶力の大敵です。成長期の子どもであればなおさら、早寝早起きを習慣づけてあげましょう。また適度な運動も脳への血流を促し、記憶力を高める効果があります。外遊びやスポーツの時間を生活に取り入れることは、ストレス発散にもなり一石二鳥です。

以上のような工夫を組み合わせ、お子さんに合ったサポートを継続することで、「忘れっぽさ」によるトラブルはかなり予防・軽減できます。ポイントは、子ども自身が見通しを持てる環境を作ることと失敗してもリカバリーできる仕組みを用意することです。親御さんの創意工夫で、お子さんの記憶力を上手に補いましょう。

専門機関の活用と相談先 – 一人で抱え込まないで

家庭でできる対応をしても、記憶の問題が子どもや家族の大きな負担になっている場合は、遠慮なく専門機関に相談することも大切です。発達障害のあるお子さんとその家族を支援する窓口は各地に用意されています。代表的な相談先としては、以下のようなものがあります。

発達障害者支援センター・教育センター
各都道府県に設置されている公的機関で、発達障害児者やその家族の相談を受け付けています。発達障害についての専門知識を持つスタッフが在籍し、子どもの特性に応じた支援方法のアドバイスや関係機関の紹介を行ってくれます。学校生活や家庭での悩みを総合的に相談できる心強い窓口です。
児童発達支援・放課後等デイサービス
未就学児や学齢期の子ども向けに療育(発達支援)プログラムを提供する民間の施設です。専門の指導員が在籍し、遊びや学習を通じてワーキングメモリのトレーニングや生活スキルの向上を図ってくれます。

例えばコペルプラスのような施設では、お子さんのできたことに注目してたくさん褒める療育を行っており、ポジティブな記憶を積み重ねて自己肯定感を育てる支援に力を入れています。専門家の客観的な視点からお子さんの特性を分析し、家庭での関わり方についても具体的な助言をもらえるでしょう。各自治体の福祉課やインターネットで地域の支援施設を調べ、見学・相談してみてください。

医療機関(小児神経科・児童精神科など)
記憶力の問題が発達障害によるものか他の要因(てんかんや脳の疾患、睡眠障害など)によるものか判断が難しい場合、一度専門医に相談してみましょう。必要に応じて知能検査(WISCなど)や発達検査を実施し、記憶力を含む認知機能のプロフィールを評価してもらえます。診断が確定していない場合は医師の診断を受けることでお子さんの特性を正しく理解でき、療育手帳の取得や支援サービスの利用にもつながります。

またADHDの場合、薬物療法によって注意力が改善し記憶力の低下を補えるケースもあります。医師と相談しながら、お子さんにとって最適な支援の形を検討しましょう。

学校の担任・スクールカウンセラー
学校生活で記憶の問題から支障が出ている場合は、早めに担任の先生やスクールカウンセラーに相談しましょう。先生方も発達障害への理解が深まってきており、個別の配慮や支援計画(IEP)の策定に協力してくれることが増えています。

「忘れ物が多いので連絡事項はメモを書かせてほしい」「テストの時は問題文を読み上げてもらいたい」など、必要と思われる配慮を伝えてみてください。家庭と学校が連携して取り組むことで、子どもの記憶力を補うサポート体制が整います。

親御さんだけで悩みを抱え込む必要はありません。公的な教育センターや支援センターでは家族からの相談も受け付けていますし、経験豊富なスタッフのアドバイスで目からウロコが落ちることもあります。周囲の専門家や支援者とタッグを組んで、お子さんを取り巻く環境を少しずつ整えていきましょう。

まとめ

発達障害の子どもの「記憶力」は、高い・低いと一言で片付けられない複雑な側面を持っています。ADHDの傾向がある子はワーキングメモリの弱さからくる忘れっぽさに悩みやすく、ASDの傾向がある子は特定分野で驚異的な記憶力を発揮しつつ日常では思わぬ忘却をすることもあります。大切なのは、親御さんをはじめ周囲の大人がその子の記憶の特性を正しく理解し、決して責めたり無理をさせたりしないことです。

記憶力の凸凹は脳の作りによる個性であり、しつけや本人の努力不足で起こるものではありません。苦手な部分は環境の工夫やサポートで補い、得意な部分は存分に伸ばしてあげましょう。

例えば忘れ物が多い子には先回りのフォローや仕組みづくりを、逆に記憶力が高い子にはその才能を活かせる場を提供するなど、その子に合わせた対応が必要です。

親御さんにとっても、「また忘れてる…」と毎日のように直面するとストレスかもしれません。しかしこの記事で紹介した工夫を実践し、必要に応じて専門家の力も借りることで、状況は必ず改善していきます。お子さんの小さな成長や達成を見逃さずに褒めることで、子どもは自信をつけていきます。自己肯定感が高まれば、記憶の課題に対しても前向きに取り組めるようになるでしょう。

発達障害の子どもたちは、記憶力ひとつ取ってもユニークで計り知れない可能性を秘めています。親御さんとしては専門性も取り入れつつ温かいまなざしで見守り、お子さんのペースで成長を支えてあげてください。苦手な記憶に振り回されるのではなく、得意な記憶を武器にできる未来を目指して、親子で一歩ずつ歩んでいきましょう。きっと、お子さんの中に眠る力が輝きを増すはずです。

この記事を書いた人

齋藤 義晃 / 勉強プランナー

メッセージ:
不良でビリから2番目、偏差値30台。そこから独自で確立した勉強法で早稲田大学に合格。この経験を活かし、家庭教師として53人の生徒を第一志望校に合格に導き、在学中に「家庭教師のゴーイング」を設立。勉強が苦手な子専門として実績30年。今でも現場の中心に立ち17,000人以上の相談を解決。心理カウンセラーの資格を取得し、不登校・発達障害の生徒さんへのサポートにも力を入れています。

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