不登校と起立性調節障害|原因と対応をわかりやすく解説

お子さんが不登校になってしまう原因のひとつに、起立性調節障害があります。
「朝起きようとするとめまいがする」
「学校に行きたいのに身体が重くて動けない」
このようなことの繰り返しで、学校に行けなくなってしまう子は多いのですが、親御さんから見ると、「仮病なのかな?」と感じてしまう場合があります。
また、「何か学校でイヤなことがあるのかも…」と精神的な理由を思い浮かべることもあるのですが、このような症状が続く場合、起立性調節障害(OD:Orthostatic Dysregulation)を疑ってみる必要があります。
見た目は元気そうなので誤解されやすいのですが、実はこれが不登校の大きな要因になっていrるのです。
そこでこの記事では、起立性調節障害の知識や、不登校との関係、診断・治療の流れ等をわかりやすくまとめました。
親として、どのように対応していけばいいか、起立性調節障害で不登校になってしまった子どもに、どう向き合っていけばいいかも解説してありますので、ぜひ参考にしてください。
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起立性調節障害とは?
起立性調節障害とは、自律神経の働きがうまく機能せず、立ち上がったときに脳や全身に十分な血流が行き渡らなくなる病気です。小学生から中学生、高校生に多く発症し、特に思春期の子どもによく見られます。
起立性調節障害の代表的な症状
朝なかなか起きられない
立ち上がったときにめまいや立ちくらみがする
頭痛・動悸・だるさが続く
午前中は体調が悪いのに、午後からは元気になる
よく周囲から「サボりじゃない?」「気持ちの問題でしょ?」と誤解されやすいのは、『学校へ行かないとなると回復してしまう』からです。
ですが、起立性調節障害はこのような症状が医学的にも認められており、「さぼり」や「怠け」ではなく、本当に身体が辛くなっているのです。
ここで親御さんには必ず知っていて欲しい、重要なポイントが3つあります。
・起立性調節障害は思春期の子どもの約1割前後に見られる
(日本小児心身医学会の調査より)
・つまり、よくある疾患で、誰でもなる可能性がある
・多くの子どもに起こり得る、不登校の原因のひとつ
この3点です。
これを知っておくだけで、体調が悪いお子さんに「仮病でしょ?」という疑いをかけずに済むので覚えておいてください。
起立性調節障害と不登校の関係
何度でも書きますが、起立性調節障害の子は、発症当初は周囲に「仮病」や「怠け」を疑われてしまいます。
この周囲の理解が得られないことが子どもの負担となるので、ますます体調不良に拍車がかかってしまいます。
起立性調節障害で学校に行けないのは、なぜ?
・朝、体が思うように動かず遅刻が増える
・午前中は動けないので欠席が増える植える
・「学校に行きたい気持ちはあるけど、体が動かない」
このようなことが続くと、子どもは「自分はダメだ」と自分を否定するようになってしまいます。
周囲からの誤解がさらなる負担に
そんな気持ちでいるのに、さらに先生などから「もっと頑張れ」と言われ、友だちには「ずる休みだろ?」などと見られ…。
自分だって頑張りたいのに出来ない子どもは、どんどん苦しくなり、精神的にも追い詰められ、学校へは行けなくなってしまいます。
不登校の原因はひとつじゃない。「心」と「体」の原因がある
不登校と聞くと、誰でも「心の問題」と思うことが多いです。ですが、このように、体調不良がきっかけとなる場合も多くあります。
ですが体調不良はなかなかわかってもらえず、誤解され、子どもはどんどん追い詰められてしまいます。
親御さんがこれをわかってあげるだけでも、お子さんはグンと気が楽になります。
お子さんが朝、体調不調を訴え、それが続くようであれば、一刻も早く医師の診察を受けるようにしてあげてください。
起立性調節障害の診断と治療方法
「朝起きようとすると体調が悪くなる」「午前中は動けない」「午後は良くなる」などの状態が続くなら、一刻も早く医療機関で診断を受けましょう。
素人判断で、「どうせ怠けだろうし」などとほおっておくと、お子さんの心身が傷つくばかりです。
診断の流れ
小児科や内科を受診する
できれば、起立性調節障害に詳しい医師がいるクリニックを選んで受診しましょう。
問診・症状の確認
朝の体調不良、めまいや頭痛の頻度、生活リズムなどを医師に説明していきます。正確に伝えられるよう、メモしていくと安心です。
起立試験(シェロング試験)
横になった状態から立ち上がり、血圧や心拍数の変化を測定します。
診断
他の病気と区別しながら、起立性調節障害かどうか判断されます。
主な治療方法
生活習慣の改善
睡眠リズムをできる範囲で整える
朝起きたらコップ1杯の水や塩分をとる
軽い運動で体力を少しずつ回復させる
薬物療法
血圧や自律神経の働きを整える薬が処方されることもあります。医師の指導のもとで使用します。
学校との調整
午前中は休養し、午後から登校する
別室登校や在宅学習を取り入れる
定期的に担任や養護教諭と連絡を取り合う
親御さんにできること
医師の診断書を学校に提出して、理解を得る
「行けない」ことを責めず、「体調に合わせて工夫していこう」と伝える
学校や支援機関と連携し、子どもが学びから完全に離れない工夫をする
不登校になった場合の対応と将来への影響
起立性調節障害からお子さんが不登校になってしまうと、「このままずっと学校へは行かないの?」「進学はどうしたらいいの?」と、様々なことが不安になります。
ですが、不登校はいまどき珍しいことではありません。ある統計では3人にひとりが不登校予備軍と言われていますし、些細なきっかけで誰でもなってしまうことです。
今は不登校の子どもへのケアや支援も沢山ありますから、親御さんは知識をつけて、お子さんに正しい対応をしてあげましょう。そうすれば、「不登校のおかけで気づけたこと」「不登校になったからこそ自分のペースを取り戻せた」など、良い面にたくさん気づけます。
① まずは心身の回復を最優先に!
不登校になってしまう原因には、お子さん自身も気が付かない強いストレスを抱えていることが大半です。
まずは、お子さんの心身を回復させてあげることを心がけてください。決して、登校を無理強いせず、お子さんが安心できる環境を整えてあげましょう。
起立性調節障害は、体調を戻さない限りずっと続いてまい、学校へ行けるようになることはありません。
② 子どもの気持ちを受け止める
お子さんは「学校に行けない自分はダメだ」と自己否定している子が大半です。ですから、決して叱ってはいけません。
親御さんは「学校へ行けないのツライよね」「でも今はゆっくり休もうよ」と、先回りしてお子さんの気持ちを代弁してあげてください。
それがお子さんの心身を回復に導きます。
③ 学校や専門機関との連携
学校に状況を伝え、担任の先生、校長先生、スクールカウンセラーなどと一緒に相談していきましょう。
体調が回復してきたら、教育支援センターやフリースクールなどで、自分のペースで学ぶこともできます。学びの道は決して一つではないことを、ご家庭で理解しておきましょう。
④ 将来への影響は一概にマイナスとは言えない
不登校になったからと言って、高校や大学の進学や、就職への道が閉ざされる訳ではありません。
むしろ、不登校になったことで「自分のやりたいこと」を見つけ、困難を乗り越えるチカラを身につける子も多いです。
「今この瞬間をどう生きるか?」その一点を見つめて進むことが、よりよく生きるコツです。
起立性調節障害と不登校の体験談・回復例
体験例1:中学2年生・女子
A子ちゃんは中2になってから、朝起きようとしても動けなくなり、学校を休む日が続いていました。午後になると回復してくるので「サボり」だと思われ、精神的にもとても辛い日々でした。
ですが、医師に起立性調節障害と診断され、生活リズムを整え、軽い運動をするようになると少しずつ回復していくようになりました。
体験例2:高校1年生・男子
起立性調節障害による体調不良で、長期間不登校になってしまったBくん。このままでは学習が遅れてしまうとスクールカウンセラーに相談し、在宅学習を取り入れることに。医療機関のサポートを受けながら、午後は登校して授業を受けるようにもなり、進学を可能にしました。
体験談からわかるように、改善のポイントは、起立性調節障害と認められた上での、
・親御さんの見守り
・学校の柔軟な対応(午後登校・保健室登校)
この2点です。起立性調節障害は、周囲の理解が得られれば、やがて回復して、学校へ戻ることが可能なことがうかがえると思います。
親御さんができる支援と具体的なサポート
起立性調節障害によって不登校になってしまった子は、精神的な負担と共に、体調不調を抱えて、とても苦しい日々を送っています。
親御さんはお子さんの気持ちを受け止めながら、毎日の生活をサポートしてあげることが大切になります。
具体的なサポート例をあげますので、参考にしてください。
朝は無理に起こさず、お子さんの体調が整うのを待つ
午前中起きられないのは、病気のためです。決して叱らず、お子さんのペースにまかせ、午後から動ければよしとしましょう
水分と塩分の補給を心がけ、生活リズムを整える
血圧や自律神経のバランスを整えるため、朝は水分と塩分を補給しましょう。適度な運動と規則正しい睡眠も重要です。
医療機関やカウンセリングにつなげる
症状や不登校による心理的負担を軽減するためには、専門家のサポートを受けると安心です。スクールカウンセラーや病院の心理士、必要に応じて民間のカウンセラーを探しましょう。
学校と相談し、午後登校やオンライン学習を取り入れる
午前中は体調が悪いですが、午後は回復してくるので、お子さんが受けられるようであれば、オンライン学習などを取り入れられるようにしてあげてください。午後だけ登校する形でもよいでしょう。
起立性調節障害は適切な診断と治療で回復するので、焦らず見守りを
起立性調節障害は、思春期の中学生・高校生に多く見られる病気です。
朝は動けず、めまいや頭痛、立ちくらみなどがあるので、欠席が続き、不登校になってしまうことがあります。
ですが、適切な診断と治療で回復に向かえますので、進学や将来への可能性をあきらめる必要はありません。
大切なのは、
親御さんや学校が「病気である」と理解してあげること
医療機関に相談し、必要な治療を受け、生活習慣を改善していくこと
親御さんは子どもの気持ちに寄り添い、焦らずサポートすること
この3点です。
お子さんの体調に合わせ、柔軟な学習体制や学校生活を確保してあげると、お子さんは自信を持つことができるので、回復しやすくなります。
親御さんは決して焦らす、お子さんを見守りつつ、サポートしてあげてください。
いずれ回復していきますから、今はお子さんが安心できる環境を最優先で整えてあげるとよいでしょう。